ハイブリッドショベルの燃費については、これまでも開発ロードマップを作成し、モデルチェンジごとに低減を図ってきました。今回はZX200-3型に対して40%の燃費低減に取り組むと同時に、好評をいただいている操作性の良さも確保することを最大の課題としました。これを達成するため、ハイブリッドシステムでは新たな高出力電動モータを開発し、リチウムイオンバッテリを採用。油圧システムではバルブやポンプの最適制御を実現しました。さらに今回のエンジンでは、尿素水を使わずにオフロード法2014年基準に適合しているのも大きな特徴です。これからも次の世代のハイブリッドショベルのために、更なる技術開発を続けていきたいと思っています。
商品開発・建設システム事業部
開発設計センタ 部長
石川 広二
KOUJI ISHIKAWA
限られたエンジンパワーと電気エネルギーで、低燃費と操作性という相反するものを両立させる。そのために、コア技術となる油圧システムを根本から考え直しました。ポンプやバルブなどのハードウェア開発、電子制御によりいかに効率よく動作させるかといったことを、コンマ1%ずつ地道に積み重ねていき、ようやく今回の目標性能を達成しました。
<本体開発担当>
先行開発センタ 主任技師
太田 泰典
YASUNORI OTA
燃費低減のためエンジンが小型になったことで、これまで以上に厳密なエネルギー管理が必要になりました。そこで今回は、アシストモータでリチウムイオンバッテリに蓄積するエネルギーを調節するとともに、エンジンにかかる負荷が滑らかに遷移するよう工夫しました。ユーザーが煩わしさを感じないパワーと操作性を実現できたと思います。
<ハイブリッドシステム開発担当>
先行開発センタ 主任技師
井村 進也
SHINYA IMURA
リチウムイオンバッテリの電力で、アシスト発電モータや旋回電動モータを
細かくコントロール。小型ながら、大電流を出力可能な新型PCU です。
今回、豊田自動織機と共同開発した、高出力のアシスト発電モータを一体化した新型ハイブリッドエンジンを採用しました。このエンジンは尿素SCRシステムを搭載せず、オフロード法2014年基準をクリアするとともに、お客さまのライフサイクルコスト低減に寄与します。豊田自動織機と議論を重ねながら、数多くの耐久試験や機能試験を行い、高い信頼性を確保しています。
<エンジン開発担当>
商品開発・建設システム事業部
開発設計センタ 主任技師
糸賀 健太郎
KENTARO ITOGA
アシスト発電モータとエンジンのコンビネーションでパワーを供給。高負荷時には、リチウムイオンバッテリに蓄えられた電力でアシスト発電モータがエンジンをアシストします。低負荷時には,エンジンのパワーにより、アシスト発電モータが発電し、リチウムイオンバッテリを充電します。
小型のエンジンをアシストする電動モータは高出力でなくてはなりません。一方、今までのエンジンルームのサイズに収めるという制約があり、サイズとパワーを両立させるのが一番の課題でした。熱解析で豊田自動織機の力も借りて、最終的には完成度の高い製品ができたと考えています。
<モータ開発担当>
制御システム事業部
先端システム設計部 主任技師
石田 誠司
SEIJI ISHIDA
従来機より電動モータの性能をアップ。旋回減速時の発電量や、加速時にアシスト量を増やして,駆動効率がさらによくなっています。
今回のハイブリッドシステムの場合、従来の蓄電装置では容量が不足するためリチウムイオンバッテリを選択しました。建設機械特有の振動や温度などが課題になりますが、日立オートモティブシステムズとの共同開発をすすめ、建設機械用のバッテリシステムを開発しました。性能はもちろん耐久性、環境性、安全性まで徹底的に検証しました。信頼性は十分です。
<バッテリ開発担当>
制御システム事業部
先端システム設計部 主任技師
竹内 健
KEN TAKEUCHI
大容量リチウムイオンバッテリの採用により、長時間連続出力が可能。バッテリに優れたパフォーマンスを発揮させるために必要な温度管理システムと制御技術には、日立の技術の粋が詰まっています。
操作性の開発は、他の分野に比べて数値化や定量的な評価が難しいところが多く、官能評価での作り込みが重要になります。そんな中でも、ただ乗るだけでなく、実際に掘削している時の油圧データを測定したり、チームでよく話し合ったりしながら、データと感覚の両面からどこが改善点なのかを一丸となって見つけていきました。納得できる成果がギリギリまで出ず大変でしたが最終的にまとまり、やりきったと感じています。
<油圧システム開発担当>
商品開発・建設システム事業部
開発設計センタ 技師
西川 真司
SHINJI NISHIKAWA