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「日立建機日本とは
20年近くの二人三脚」
電動式油圧ショベルの
開発を通じて
築いた
両社の信頼とは

石坂産業株式会社様

電動式油圧ショベル

スペック 例)ZX200EL-5B
3相誘導電動機
定格出力 90kW
電圧 400V(50Hz地域)/ 440V(60Hz地域)

日立建機の既存建機をベースに、エンジン式ではない電動モーターを原動機とした油圧ショベルを開発。

既存建機をベースに、お客さまの要望に応じたカスタマイズやオーダーメイドに近い新たな建機の開発・提供を行う日立建機日本の応用開発部。その製品開発の裏側にはどのようなストーリーがあったのか。産業廃棄物の処理事業に取り組む石坂産業株式会社からの要望を受けて、20年近くに渡り開発・改良を重ねてきた電動式油圧ショベルの開発ストーリーをお届けする。

作業環境の改善を目指して、全天候型
プラント内に電動式油圧ショベルを導入

ごみをごみにしない社会の実現に向けた「ZERO WASTE DESIGN」をビジョンに掲げ、産業廃棄物の再資源化に取り組む石坂産業株式会社。本社を構える埼玉県三芳町の敷地内に、屋内で産業廃棄物の完全処理が可能な全天候型プラントを保有しており、産業廃棄物のリサイクル化率98%という驚異的な数字で国内外から注目を集めている。

そんな石坂産業がプラント内に導入しているのが、日立建機日本の電動式油圧ショベルだ。電動式油圧ショベルはエンジンの代わりに電動モーターを搭載。排気ガスが一切でないため環境負荷を低減でき、またエンジン式の油圧ショベルと比較してランニングコストを抑えられることもメリットとして挙げられる。

左:埼玉県入間郡三芳町に位置する石坂産業の本社ビル
右:敷地内には全天候型プラントをはじめ、自社で保有する広大な里山も広がる

石坂産業生産統括部の北村雄介部長

石坂産業がエンジン式の油圧ショベルではなく、電動式油圧ショベルをプラント内に導入したのには全天候型プラントならではの理由がある。石坂産業株式会社の北村雄介生産統括部長は次のように語る。

「全天候型プラントは廃棄物処理の際に発生する粉塵の飛散や騒音などを防ぐことができるので、環境や近隣への配慮といった面で大きなメリットがあります。その一方、屋内ですべての作業を行うため、エンジン式の油圧ショベルを使用すると、排気ガスが工場内にこもったり、室温が著しく上昇してしまうなど、作業環境に大きな悪影響がありました。そこで、排気ガスの出ない電動式の油圧ショベルを導入できないかと考えたんですが、当時はまだ電動式油圧ショベルの開発に取り組んでいる建機メーカー自体が少なかった。そんな数少ないメーカーの一つが、日立建機さんだったんです」

20年近くの長きに渡り、電動式油圧
ショベルのさまざまな改良に取り組む

こうして石坂産業が日立建機の電動式油圧ショベルを初めて導入したのは、2006年のこと。翌年以降も電動式油圧ショベルへの入替えを進め、現在ではプラント内に10台の電動式油圧ショベルが稼働している。

電動式油圧ショベルは2006年の導入時から改良と試行錯誤を重ね、20年近い年月をかけてその性能をブラッシュアップさせてきた製品だ。現場での運用を通して、どのような課題や改善点があるのかをつぶさに分析しながら、石坂産業からの要望を取り入れる形で継続的に改良に取り組んできた。

プラント内で稼働する2-3号機と呼ばれる電動式油圧ショベル。機体から上空に伸びるケーブルで給電を行なっている

日立建機日本応用開発部主任を務める森孝太

その中でも代表的な改良の一つが、電動式油圧ショベルへ電力を供給するケーブルを取り付けるケーブルサポートの改良だ。電動式油圧ショベルの現場設計担当者である日立建機日本応用開発部主任の森孝太は次のように語る。

「お客さまの一部のヤードにて稼働する電動式油圧ショベルにおいて、ケーブルサポート部分の破損リスクが高まってしまうという問題がありました。また石坂産業さまは電動式油圧ショベルが長時間稼働する現場のため、対策を行うことが急務でした。そこで破損部分に対してFEM解析(※1)を実施。どの箇所に力がかかっているのか、どのような力が影響して破損が発生するのかを特定し、うまく力を分散させるような形状にケーブルサポートを改良することで対処しました。改良後は、稼働時間が10,000時間を超えても破損は発生していません」

※1:FEM(Finite Element Method)解析:コンピュータで、構造物の応力や変形などを数値的に解析する手法の一つ。構造物を小さな要素の集合体に分割し、外力などの想定される条件を加え、構造物に発生する応力や変位などのシミュレーションを行う。

またケーブルサポートの破損以外にも、廃棄物を分別・処理する際に発生する粉塵が電動式油圧ショベルの制御盤内に溜まってしまい、電子部品の破損リスクが高くなるという問題もあった。これは屋内で作業を行う全天候型プラントだけでなく、トンネルなど空気の流れが滞りやすい現場全般で稼働する建機に付きものの問題でもある。これに対しては以下のようなアイデアを考案した。

「電動式油圧ショベルの制御盤には盤内を冷却するためのファンが搭載されており、ファンが稼働することで制御盤内を冷却します。それによって、粉塵が内部に溜まってしまうという問題があったわけですが、空気の経路を変更することでそれを解決しました。それまでは空気を吸い込む形だったものを、逆に吐き出すようにして粉塵の入り込みを防ぐようにしたのです。一方、空気の流れを変更すると冷却性能が落ちてしまう懸念もあったので、フィルタを大型化するなど、冷却性能が低下しないようさまざまな改良を盛り込みました。粉塵問題は屋内で稼働する建機の究極的な課題でもあるので、引き続きこちらの改良は続けていく所存です」

加えて、電動式油圧ショベルを操縦するオペレーターの作業環境向上にも取り組んだ。それが運転席内へのヒーターの設置だ。エンジン式油圧ショベルは、エンジンの熱で温水を作ることで、運転席内に温風を送り出す仕組みになっている。しかし、エンジンが搭載されていない電動式油圧ショベルにはそのようなエアコンヒーターが当初ついておらず、冬場の作業においてキャブ内部が温まりにくく、オペレーターに大きな負担を強いていた。近年、導入した新しい電動式油圧ショベルでは、温水を作る専用の装置を搭載することでヒーター機能を完備。オペレーターの作業環境が著しく向上した、と現場からの好評価も得ている。

左:プラント内でも特に稼働率が高いという主力の4-3号機。さまざまなものが入り混じった混合廃棄物をすくい上げて巨大なふるい機に落とし込んでいる
右:木材などの廃棄物を処理する1-2号機

技術力と対応力、そして顧客への理解力。3つの力を大きな武器に

日立建機日本において、電動式油圧ショベルは工場などのさまざまな現場の状況に合わせて作りこむオーダーメイド製品であるため、ケーブルサポートの破損、制御盤の粉塵問題、ヒーター設置など、さまざまな課題に直面するたび、石坂産業と二人三脚でブラッシュアップしてきた。

これまでのやりとりを振り返る中で、自分たちの要望を的確に汲み取り、実現してくれる日立建機日本の“技術力の高さ”を評価すると同時に、難題に対しても前向きに向き合うフットワークの軽さと “柔軟な対応力”も卓越していると語る北村部長が、今でも記憶に残っている出来事がある。

「産業廃棄物の処理は、石坂産業では当日処理を基本としています。その日に持ち込まれた廃棄物はその日のうちに必ず処理して、終業時には明日の受け入れ態勢を万全に整えておく。そのため、作業を行う電動式油圧ショベルが何らかの不具合でストップしてしまうと致命的なんです。不具合が起きたら、その日のうちにどうしても直しておきたい。過去に一度、終業間際にモーターが破損してしまったことがあり、夕方の遅い時間に日立建機日本さんに連絡したときのことはよく覚えています」

日立建機日本埼玉支店新座営業所の片岡基

電動式油圧ショベルに給電を行うケーブルは「カーテンレール形式」を採用。これによって電動式油圧ショベルの小回りや機動性を高めている

連絡を受けた日立建機日本埼玉支店新座営業所の片岡基は、すぐさま現場にかけつけ、建機の状況を把握。建機を回収する運搬車や、代替機を手配するなどの迅速な対応に臨んだ。また、作業途中の中途半端な位置で停止していた電動式油圧ショベルの油圧を抜いて搬出可能な位置に移動させるなどの対応も実施。作業が完了したのは日付が変わる頃だったが、その時のことを片岡は次のように振り返る。

「石坂産業さまにとって建機が止まってしまうのは死活問題。そのことは重々理解していたため、私としてもなんとかしなければという想いがありました。また、石坂産業さまには我々としても電動式油圧ショベルの提供・開発を通じて、これまでさまざまなことを学ばせてもらってきた経緯もあります。ですから、歯を食いしばってでもついていかなければならないお客さまだ、とそんな想いもありましたね」

「日立建機日本は技術力やフットワークの軽さはもちろん、さまざまな建機メーカーの中でも一番うちのことを理解してくれている」と、続けて北村部長は語る。顧客の要望をしっかりと形にできる“技術力”、トラブルなどが発生した時でも柔軟に対応する“対応力”、そして顧客の事業内容やそこで何が求められているのかを的確に把握する“理解力”。石坂産業の電動式油圧ショベルはまさに、オーダーメイド製品に求められる3つの力を結集させた象徴的な事例だと言えるかもしれない。

双方向的なコミュニケーションで、
今後も共に建機をブラッシュアップする

2006年の最初の電動式油圧ショベル導入後、20年近くに渡り改良を続けながらサポートを行ってきた日立建機日本。そのような長期的な関係性が築けた理由は「一方通行ではない、双方向的な関係性が実現できたこと」だと片岡は語る。

「石坂産業さまからは、私たちの提案内容をしっかり咀嚼いただいた上で“こうしてはどうか”“逆にこういうことは可能か”などポジティブなご意見をいつもいただきます。私たちもそのような前向きなご意見には可能なかぎりお応えしたいと考えていますし、現実的に難しいことはざっくばらんにお話します。そんなやり取りができる関係性を構築できたことが、長きに渡って電動式油圧ショベルをブラッシュアップし続けることができた大きな要因だと思います」

また、開発を担う森は「石坂産業さまには本当に多くのことを学ばせてもらっている」と強調する。

電動式油圧ショベルの全体像

北村部長の言葉からは日立建機日本に寄せる信頼と今後へのさらなる期待が感じられた

「一つの現場で、これだけの台数の電動式油圧ショベルが稼働している現場はなかなかありませんので、我々応用開発部としても日々、勉強させていただいています。電動式油圧ショベルが稼働しやすいように工場のレイアウトそのものを積極的に変えていただくなど、石坂産業さまからも非常に協力的な姿勢をいただいているので、我々開発側としても大いに熱が入ります」

「我々石坂産業の現場を、新たな技術を試す実験の場として今後も活用してもらえたら」と笑顔で語る北村部長は、環境への取り組みに積極的に力を入れる企業としての立場から、日立建機日本への今後の期待を語ってくれた。

「油圧ショベルの電動化に取り組んだことが、我々の環境経営への取り組みを一歩進めてくれた側面もあります。石坂産業は日本企業として初めて“気候変動対策に関する制約(The Climate Pledge)”に署名したのですが、そのような企業として、油圧ショベルを電動化していると胸を張って言えるのは大きい。可能であれば、油圧ショベル以外の建機もすべて電動化したいですし、たとえば水素で動く油圧ショベルなども作ることができたら、ネットゼロカーボンを目指す企業として大きな後押しとなってくれるでしょう。そんなところに辿り着くまで、この先もお力添えいただけるとうれしいですね」

技術力と対応力、そして顧客への理解力をベースに20年近くの長きに渡り、電動式油圧ショベルの開発・改良に取り組んできた日立建機日本。今後も石坂産業が掲げる未来へのビジョンを共に見据えながら、より良い建機の開発に尽力していく。

石坂産業株式会社

1971年設立。ごみをごみにしない社会「ZERO WASTE DESIGN」を企業ビジョンに掲げ、埼玉県三芳町にて産業廃棄物の再資源化・環境教育活動に取り組む。再資源化率98%を誇る全天候型再資源化プラントには、国内だけでなく世界各地から毎年4万人以上もの見学者が訪れている。

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