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お客さま・営業・開発が
三位一体となり唯一無二の
鋼管杭打機が誕生した

旭コンステック株式会社様

SPD03-5(鋼管杭打機)

3段変速オーガ
最大トルク 78.4kNm
最高回転数 13min-1
5.29m4.29mリーダならびに2m低空頭対応使用

日立建機のミニショベルをベースマシンに、屋内でも杭打ち
作業ができるような小型の鋼管杭打機を新たに開発。

日立建機の既存建機をベースに、お客さまの要望に応じたカスタマイズやオーダーメイドに近い新たな建機の開発・提供を行う応用開発部。その製品開発の裏側にはどのようなストーリーがあったのか。 お客さまである旭コンステックからのご要望を受け、既存マシンに“超改造”といっても差し支えない大幅な改造を施し、より小型かつ高性能な鋼管杭打機を実現した「SPD03-5」の開発ストーリーをお届けする。

より狭い、特殊な現場での作業を
可能にする杭打機を求めて

愛知県あま市に本社を置く旭コンステック株式会社。1965年の創業以来培ってきた豊富な建築技術とノウハウを活かし、建設工事や建材加工をはじめ、オリジナル製品の開発や工法開発など幅広い事業を手がけている。

とりわけ「杭打ち」の技術には、中部エリアの企業の中でも特に定評がある。そもそも杭打ちとは建築物を建てる土地の地盤が弱い場合に、杭を打ち込むことで地盤を強化し、建築物を安全に支える土台を築く基礎工事を指す。一般的に屋外の広い現場で行われるイメージが強い杭打ちだが、旭コンステックは特殊な現場での杭打ちも数多く請け負っており、屋内や狭い場所での杭打ち工事も得意としている。

日立建機日本の建機はオレンジを基調としたカラーリングだが、
SPD03-5は旭コンステックさまのご要望に合わせて本体カラーを青色に

旭コンステック側の主な窓口役となった西川康弘さん

旭コンステックと日立建機日本の付き合いは長く、杭打ち作業に必要な鋼管杭打機をはじめ、これまでにさまざまな建機を納品してきた。しかし、屋内など特殊な現場での杭打ち工事を数多く手がける中で、旭コンステックは従来の鋼管杭打機では解消できない、ある悩みを抱えるようになっていた。旭コンステックの中部建設部工事2課で課長代理を務める西川康弘さんは次のように語る。

「端的に言うと、もっと狭い現場でも勝負できる杭打機が欲しいと思っていました。これまで我々が使用していた杭打機は上空に3.5mのスペース(高さ)が必要でしたが、もっと狭い屋内でも作業を行うためにその高さを2.5m程度に抑えたかった。極端な話、トイレの中でも作業が行えるような杭打機、と言えばイメージしやすいかもしれません。とにかくより小型で、それでいてパワーも十分に兼ね備えた杭打機が欲しい。そんな相談を日立建機日本さんに持ち込みました」

小型化とパワーのトレードオフを
いかに乗り越えるか?

旭コンステックの要望に応えるために、新たな応用開発製品のプロジェクトが動き出した。目指すのはより小さくて、パワーのある鋼管杭打機。リクエストは明快だったが、しかし、実現させるのはそう簡単な話ではなかった。一般的にパワーを大きくしようとすれば、必然的に建機のサイズも大きくなってしまうものだからだ。建機の小型化とパワー。一見、相反する2つの要素を可能な限り両立させるために、両社の間で現実的な着地点を探ることがまず必要になった。旭コンステックとの窓口役となった日立建機日本東海営業所の営業担当・川本悟は次のように語る。

「とにかく最初は旭コンステックさんと細かな打ち合わせを繰り返しました。ご要望を持ち帰って、開発を担う応用開発部のメンバーにも詳細を共有。都度、相談しながら現実的に可能なこと、難しいことを峻別して旭コンステックさまにもまた、つぶさにそれを共有する。そうした繰り返しを経て、だんだんと現実的な落としどころ、目指すべきマシンの姿が見えてきたんです。現実的・技術的にどうしても難しい点に関しては、旭コンステックさまに譲歩いただいた部分も正直あったと思います。その分、ここは妥協できないという部分に関しては、私たちも徹底して実現に向けた努力を行いました」

日立建機日本の応用開発担当の小林純平

日立建機日本の営業担当として窓口役となった川本悟

旭コンステックとの連携はもちろん、社内でも営業担当と開発担当が密にコミュニケーションを取りながら、求められる建機の姿を現実的な形に落とし込む。そのような日立建機日本の姿勢に対して、西川さんは次のように語る。

「正直、我々からはかなりの無茶振りもしてしまったと思います(笑)。それが現実的に可能にせよ、難しいにせよ、しっかり検討してくれたんだなという納得感と安心感は毎回の打ち合わせで感じていましたね。私たちのためにここまで時間を使ってくれているんだ、と本当にありがたい限りでした」

要望に応じて既存のマシンをカスタマイズする “オーダーメイド”に近い応用開発製品だが、それを1台単位の小ロットから開発してくれたこともありがたかった、と西川さんは重ねる。通常、応用開発製品のような特別な建機を製造する場合は、コスト面の問題から何十台単位といったまとめての発注・製造が一般的だ。たとえ1台単位の開発であってもそれを厭わない日立建機日本のスタンスを、日立建機日本応用開発部開発グループ技術課長の小林純平は次のように語る。

「カタログ販売的に建機を提供するのではなく、お客さまごとのご要望に合わせた建機を開発していく。それが私たち応用開発部のミッションであり、存在意義であるとも言えます。日立建機グループでは“CIF(Customer Interest First)=顧客課題解決志向”というスローガンを掲げていますが、応用開発部はその歴史と成り立ちから見ても、CIFの精神をダイレクトに体現している部署なのかもしれません」

小型化に加えて、
さまざまな付加価値も実現した“超改造”

こうして完成した新たな鋼管杭打機が「SPD03-5」だ。日立建機のミニショベルをベースマシンとしながらも、ほとんど原型を留めない“超改造”を施した建機となった。

その最大の特徴はやはり、建機全体の小型なサイズ感にある。高さ2m、横幅1.5m。建機の前方部には、杭打ちを行う現場の条件にあわせて付け替え可能な折りたたみ式の専用リーダを搭載。これによって、輸送の際の高さを抑えることが可能になり、当初の課題であったより狭い場所や特殊な場所における杭打ち工事にも柔軟に対応できるようになった。お客さまへの提案の“幅”が広がった喜びを西川さんは次のように語る。

左:他の建機と比較するとSPD03-5の小型なサイズ感が際立つ
右:建機前方に取り付けられた専用リーダ

SPD03-5のオペレーターを務める旭コンステックの金島健二さん

「以前の杭打機では入れなかった、狭い屋内の現場でも杭が打てる。お客さまから“この現場すごく狭いんですけど、打てますか……?”と問い合わせを受けた時、“打てます!”と即座に自信を持って応えられるようになりました。SPD03-5を現場に持っていくと“こんなに小さいの!?”と驚かれることも多いです」
狭い屋内で作業ができる小型さ以外にも、SPD03-5はさまざまな付加価値を実現している。たとえば搭載した施工管理装置には、今回新たに巻き込み事故等を防止する安全管理システムや、遠隔からの操作を可能にする通信システムを盛り込んだ。これによって、離れた場所からもタブレット端末で施工状態を確認したり、リモコン操作で作業したりすることも可能になった。SPD03-5のオペレーターを務める旭コンステックの金島健二さんは「現場で出来ることの幅もかなり広がった」という。

「現場によっては、重機から壁までの距離がわずか10cmというギリギリの場所で杭を打たなければならない場合もあります。タブレット端末での遠隔確認やリモコン操作が可能になったことで、そのような難しい現場での作業が飛躍的に楽になりましたし、これまでは施工が難しく、作業が2〜3日止まってしまうような現場での作業も本当にスムーズになりました。打ち込む杭が運転席から見えないような、非常に作業がやりにくい現場もあるので、そんなときには杭打ち作業の様子を離れたところから俯瞰できるリモコン操作の強みを実感します」

左:施工管理装置の操作画面 右:このリモコンでSPD03-5を遠隔操作する

発注者・受注者の枠を超えた
信頼関係の構築が大きな成功要因に

「他の建機メーカーでは、SPD03-5は絶対に作れなかっただろう」と西川さんは今回のプロジェクトを振り返る。同時にSPD03-5のさらなる可能性、そして日立建機日本へのさらなる期待も大いに感じているという。
「いずれこれが実現できたら……という究極的な理想に完全自動化があります。座標を打ち込んだら、ボタンひとつで自動運転で杭を打ち込んでくれるとか、杭の吊り込みや杭と杭をジョイントする作業なども自動でできれば最高ですね。人手不足に見舞われている建築業界の救いの一手にもなるでしょう。加えて、排ガスを出さないより環境にやさしい杭打ち機も実現できたら素晴らしい。こうやっていろいろと無茶振りをしてしまいますが、でもそれは“日立建機日本さんなら、きっとなんとかしてくれる”という期待感があるからなんです」

斜め上空から見たSPD03-5の全体像

4人が顔を合わせると笑い話もよく飛び交う

難しい注文は、日立建機日本への信頼の証。旭コンステックと日立建機日本がそのような強固な信頼関係を構築できたことこそが、今回のSPD03-5開発プロジェクトの大きな成功要因だと川本も語る。

「お客さまである旭コンステックさま、日立建機日本の営業部門、そして応用開発部門の3者が協力して、三位一体、みんなで一緒に作り上げたマシン。SPD03-5には特にそんな実感を持っています。そのような体制、そのような信頼関係を構築できたことこそが、このプロジェクトの何よりの価値だったように思えます」

発注側と受注側、あるいは営業部門と開発部門。ともすれば二項対立的な構図に陥りがちな“壁”を超えて、関係者がSPD03-5というゴールに向けてひとつのチームになれたこと。本プロジェクトの成功要因を小林も同じように考えている。

「SPD03-5という難しい建機の開発は、一方通行のコミュニケーションでは、決して成り立たなかったと思います。お互いの合意点、ときに妥協点も探りながら、現実的な最適解を見出していく。そのためには、立場を超えたざっくばらんな議論も必要になりますし、何かを追求する代わりに、他の何かを諦めなければいけないような、お客さまにとってはそんな難しい判断を突きつけられることもあったはず。そうしたことを乗り越えて、今回SPD03-5を形にできたのは、ひとえに旭コンステックさまが、私たち日立建機日本を信頼してくれたからに他なりません。本当にありがたいことですし、私たちにとっての本プロジェクト最大の成功要因は、旭コンステックさまの存在そのものだと言えるかもしれません」

クライアント、営業部門、そして応用開発部門が三位一体となって作り上げることに成功したSPD03-5。発注者・受注者という枠を超え、今後も旭コンステックと一丸となりながら、SPD03-5のさらなる改良・機能向上に取り組んでいく。

SPD03-5の操縦席から見た風景

旭コンステック株式会社

1966年の設立以来、半世紀以上にわたり建設事業を営む。創業時からの「ないものは、つくる」というものづくりの精神で、建設工事のみならず、工法開発から自社製品の製造までを手がける。変化する時代のニーズの中で継承され、進化し続けてきた「技術」と、豊かな発想力で答える「人」の力で、「街づくり」という社会基盤整備に貢献している。

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